WindowsでTUNモードを使う前に知っておきたいこと
Clash Verge RevのTUNモードは、Windowsの仮想ネットワークアダプターを利用して、ブラウザだけでなく、通常のシステムプロキシ設定を参照しないアプリやコマンドラインツールの通信もClashへ取り込む機能です。「ブラウザは接続できるのに、ゲームや開発ツールだけ通信できない」「アプリ側にプロキシ設定がなく、手動入力もできない」といった場合に有効です。Windows 11だけでなくWindows 10でも利用できますが、Clash Verge Revのバージョン、Mihomoコア、Windowsのセキュリティ設定によって表示名や確認手順が少し異なる場合があります。
一方で、TUNモードは単にスイッチをオンにすれば必ず安定する機能ではありません。仮想アダプター、ルーティング、DNS、管理者権限、Windows Defender Firewallが同時に関係するため、設定を急いで変更すると「インターネット全体が切れる」「ローカルプリンターに接続できない」「Clashを終了しても通信が戻らない」といった症状が起きることがあります。本稿では、Clash Verge Rev Windows設定を初めて行う人を想定し、準備、管理者としての起動、TUNの有効化、仮想アダプターの確認、通信テスト、失敗時の復旧までを順番に説明します。
TUNモードとは:Windows上に仮想ネットワークインターフェースを作り、IPパケットをClashへ転送する方式です。HTTPプロキシに対応していないアプリや一部のUDP通信も扱いやすくなりますが、すべてのアプリやネットワーク環境で同じ結果になるとは限りません。
作業前に、現在のClash Verge Revで通常のシステムプロキシが動作しているか確認しておくと、問題の切り分けが簡単になります。TUNを有効にする前にプロファイルをバックアップし、VPNソフト、別の仮想NIC、広告ブロッカー、企業向けセキュリティソフトが動いている場合は、競合する可能性もメモしておきましょう。学校や会社のネットワークでは管理者ポリシーによって仮想アダプターが禁止されていることもあるため、許可されている環境でのみ設定してください。
事前準備:Clash Verge Revとプロファイルを整える
最初に、Clash Verge Revを信頼できる配布元から入手した最新版へ更新します。検索結果には名称の似た再配布版や古いビルドが混在することがあるため、ファイル名だけで判断せず、リリース元、更新日、対応OS、チェックサムの有無を確認してください。古いクライアントでは、MihomoのTUN機能に対応していても、サービス登録や権限要求の処理が現在のWindowsと合わない場合があります。
次に、利用するプロファイルが正常に読み込める状態か確認します。Clash Verge Revを開き、プロファイル一覧から対象のYAMLを選択して、設定エラーが表示されないことを確認してください。プロキシグループに利用可能なノードがあり、TUNを使わない通常のシステムプロキシでWebページを開けるなら、基礎部分は整っています。プロファイル自体が壊れている状態でTUNだけを有効にすると、原因が複数重なって判断しにくくなります。
特に確認したいのはDNSとルールです。DNSサーバーが応答しない、ルールの最後が意図せず別のグループを指している、ローカルネットワークまでプロキシへ送る設定になっている、といった問題はTUN有効後に目立ちます。自宅のルーター、プリンター、NASを利用する場合は、192.168.0.0/16、10.0.0.0/8、172.16.0.0/12などのプライベートアドレスを不用意に遠隔プロキシへ送らない設計にしておくと安全です。
- 先にバックアップ:現在のプロファイルを別名で保存し、変更前の状態へ戻せるようにします。
- 競合アプリを確認:他社VPN、WireGuard、古いClashクライアント、通信監視ツールを同時に動かさないようにします。
- ノードを固定:最初のテストでは自動選択より、安定したノードを一つ選びます。
- 通常接続を確認:TUNをオンにする前に、Clashの接続一覧とブラウザで通信できることを確認します。
管理者権限でTUNモードを有効にする手順
WindowsのTUN設定では、仮想アダプターやルートを作成するために管理者権限が必要になることがあります。Clash Verge Revを通常起動したまま設定を変更しても、権限要求が出ない、TUNが一瞬でオフに戻る、仮想アダプターが作成されないという場合は、いったんアプリを終了して管理者として起動してください。
- Clash Verge Revを完全に終了する:ウィンドウを閉じるだけでなく、タスクトレイのアイコンを右クリックして終了を選びます。タスクマネージャーにプロセスが残っている場合は、終了を確認してから次へ進みます。
- 管理者として起動する:スタートメニューまたはデスクトップのClash Verge Revを右クリックし、「管理者として実行」を選択します。ユーザーアカウント制御が表示されたら、配布元とアプリ名を確認して許可します。
- 設定画面を開く:左側の設定メニューから、一般設定、システム設定、またはネットワーク関連の項目を探します。バージョンによって「TUN Mode」「Enable TUN」「TUNモード」のように表記が異なります。
- サービスまたはヘルパーを確認する:Service Mode、Mihomo Service、Tun Serviceなどの項目がある場合はインストールまたは有効化します。ステータスがActive、Running、Installedなどになったことを確認します。
- TUNをオンにする:TUNモードを有効にし、必要であればスタックをSystemまたはMixedから選択します。初回は複雑なカスタム値を追加せず、標準設定のまま再起動して動作を確認します。
画面に「Service Modeのインストール」や「管理者権限が必要」という案内が出た場合は、表示に従って一度インストールし、ステータスを確認します。ここで何度もスイッチを連打するのは避けてください。権限サービスの登録が完了する前に設定を繰り返すと、古いサービスと新しいサービスが混在して、削除や再登録が必要になる場合があります。
注意:管理者として起動することは、知らない実行ファイルに権限を与えることとは違います。必ず入手元と署名、ファイル名を確認してください。非公式の改造版を管理者権限で実行するのは避けるべきです。
Windows向けのTUNオプションとルーティング
TUNのスイッチがオンになった後は、ルーティングとDNSの動きを確認します。Clash Verge Revの画面から設定できる場合もありますが、プロファイルのYAMLにTUN項目を記述する方式もあります。設定名はMihomoコアのバージョンにより変わる可能性があるため、下記は考え方を理解するための代表例として扱い、実際にはクライアントが生成する設定や公式ドキュメントを優先してください。
tun:
enable: true
stack: system
auto-route: true
auto-detect-interface: true
strict-route: false
enableはTUNの有効化、auto-routeは必要なルートを自動作成する設定、auto-detect-interfaceは現在使っている物理ネットワークインターフェースの検出に関係します。ノートPCでWi-Fiと有線LANを頻繁に切り替える場合、自動検出が有効だと環境変更後の設定漏れを減らせます。strict-routeは経路を厳格に制御するための項目ですが、初めて使う段階で有効にすると、ローカル通信やVPNとの併用で接続を失うことがあります。問題が出たときは、まず標準値へ戻して原因を一つずつ確認してください。
DNSはTUNの安定性に大きく影響します。DNSリクエストがWindows側へ直接流れ、取得したIPだけがClashへ渡る構成になると、ルール判定と実際の接続先にずれが出ることがあります。Clashのログで名前解決エラーが出ていないか、同じドメインが毎回異なる経路へ送られていないかを確認しましょう。Fake-IPを使う場合は、ローカル機器や一部のゲーム、Microsoft関連サービスで例外が必要になることがあります。動かないアプリが出たら、いきなりDNS設定を全変更せず、そのアプリのドメインと接続方式をログから調べます。
仮想アダプターと通信を確認する方法
TUNをオンにした後、まずWindows側で仮想ネットワークアダプターが作成されたか確認します。「設定」からネットワークの詳細設定を開き、ネットワークアダプターの一覧を表示してください。Clash、Mihomo、Tun、Wintunなど、Clash Verge Revや使用中のドライバーに関連する名前が追加されていれば、作成自体は成功している可能性があります。無効と表示されている場合は、右クリックで有効化する前にClashのログとサービス状態を確認してください。
コマンドプロンプトまたはPowerShellでは、次のコマンドでアダプターとルートを確認できます。
ipconfig /all
route print
nslookup example.com
ここで重要なのは、表示された行をすべて暗記することではありません。TUNをオンにする前後で、仮想アダプターが増えたか、デフォルトルートが異常に重複していないか、DNSサーバーが意図したものになっているかを比較します。ネットワークが切れた場合は、Clashの接続一覧でリクエストが記録されているかも見ます。リクエストが一件もないなら、TUNサービスやルーティングの問題である可能性が高く、リクエストはあるのに失敗するなら、ルール、ノード、DNS、TLSの順番で調べると効率的です。
通信テストは一つのサイトだけで判断しないようにします。ブラウザで通常のHTTPSページを開き、Windowsの時刻同期やMicrosoft Storeなど、別系統の通信も必要に応じて確認します。さらに、対象アプリを一度終了してから再起動し、TUN有効後の新しい接続がClashの接続一覧に表示されるか確認してください。アプリによっては起動時に接続先をキャッシュするため、TUNを有効にしただけでは既存プロセスの通信経路が変わらないことがあります。
確認のコツ:最初のテストでは一つのWebページ、一つのコマンド、一つの対象アプリだけを順番に確認します。複数のVPNやブラウザを同時に試すより、Clashの接続ログとWindowsのアダプター状態を同じ時刻に見た方が原因を特定しやすくなります。
TUNが動かないときの切り分けと復旧
TUNがオンにならない、すぐオフになる
最も多い原因は管理者権限不足、サービス未登録、別のTUNドライバーとの競合です。Clash Verge Revを終了し、管理者として再起動してからService Modeの状態を確認します。別のClashクライアントやVPNが動作している場合は一時停止し、Windowsを再起動してからClash Verge Revだけで試してください。それでも失敗する場合は、設定画面にあるサービスの再インストール、またはアプリの修復を検討します。むやみにドライバーを手動削除すると、他のネットワーク機能まで壊れる可能性があります。
TUNをオンにするとインターネットが切れる
この場合は、まずTUNをオフにして通信を戻し、原因を一つずつ減らします。プロファイルの最後のルールが存在するプロキシグループを指しているか、選択中のノードが実際に応答するか確認してください。次に、ローカルネットワークの除外、DNSの応答、Windows Firewallの通知を確認します。Wi-Fiから有線へ切り替えた直後なら、古いインターフェースを自動検出している可能性もあります。カスタムルートや厳格なルート設定を追加した直後に発生したなら、変更を戻して標準値で再テストします。
ブラウザは通るが特定アプリだけ通らない
アプリが独自のDNS、独自VPN、QUIC、証明書ピンニングを利用していると、一般的なHTTPS通信とは挙動が変わります。Clashの接続一覧に対象アプリのドメインが表示されるかを確認し、表示されなければTUNがそのプロセスの通信を捕捉できていない可能性があります。表示されるのに失敗する場合は、ルールの判定結果、UDP通信の扱い、対象ノードの対応状況を調べます。ゲームや業務アプリでは、必要な認証・更新サーバーの一部だけが別ドメインになっていることもあるため、エラー画面の文言だけでドメインを推測せず、ログを根拠にしてください。
設定を元に戻す方法
通信が不安定なままなら、TUNをオフにし、Clash Verge Revを終了してからWindowsを再起動します。再起動後も通信できない場合は、ネットワークアダプター一覧でClash関連の仮想アダプターが残っているかを確認し、Clashのサービスを停止して通常の物理アダプターを有効にします。プロファイルをバックアップへ戻し、システムプロキシだけで通信できる状態を作ってから、TUN、DNS、ルーティングを一項目ずつ再設定してください。設定を一度に全部変えないことが、最短の復旧方法です。
WindowsでのTUN設定は、単なる「全通信をプロキシへ送る」スイッチではなく、仮想NIC、管理者サービス、DNS、ルール、アプリごとの通信方式を組み合わせる作業です。まず通常のプロキシでプロファイルとノードを確認し、次に管理者権限と仮想アダプターを確認し、最後に対象アプリを一つずつテストすれば、問題が起きても戻る場所を失いません。市販の同類ツールには、画面の案内が簡略化されすぎて内部のルートやDNSを確認しにくいもの、Windowsの更新後に仮想アダプターが不安定になっても日本語の切り分け情報が少ないものがあります。その点、Clash 公式サイトはClash Verge RevやMihomoの設定項目を、権限・TUN・ログ・復旧という実際の作業単位で整理して確認できるため、設定を自分で管理したいユーザーに向いています。これからWindowsで安全に手順を試すなら、まずダウンロードするところから始め、バックアップを取ったうえで本稿の順番どおりに進めてください。